新静岡セノバWebマガジン

POSTED DATE:2017.01.23

Mika Ninagawa Special interview

この春、新静岡セノバが蜷川実花によって彩られる。

蜷川実花/写真家・映画監督
木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映画『さくらん』(2007)、『ヘルタースケルター』(2012)を監督、他映像作品も多数手がける。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事就任。
http://www.ninamika.com/
蜷川実花展 in cenova
【期間】
 ~3/26(日)
【場所】
 1F 自由通路吹き抜け 中央エスカレーター及びエレベーター
 5F 西エスカレーター横

蜷川実花氏

2/1より静岡県立美術館で開催される蜷川実花展。同展覧会に合わせ新静岡セノバ館内が蜷川実花の作品によって彩られる。
春の到来に合わせ華やかに演出される空間の裏側で、作り手は何を思い、どんなメッセージを届けてくれるのだろう。

一昨年、活動20周年を迎えられました。活動を始めた当初と現在で変わったこと、変わらないことは何ですか?

基本的には、変わっていないです。大事な芯の部分である、真面目にコツコツとやっていくこと。でも、こんなにいろんな仕事をするとは思ってもみなかったですね。映画もPVも自分から手を挙げたわけではなく、『やってみない?』と言われて、面白そうだったので引き受けただけなんです。40歳を過ぎて、それまで自分のなかにあった『写真家はこうじゃないと』という枷を外してからは、より多彩な方面から声をかけていただくようになりました。

台湾や中国をはじめアジア諸国で個展を開催したり、水族館とのコラボレーションを行うなどますます活動の場が広がっていますね。
異なる分野・環境で表現をする時に気をつけていることは何ですか?

写真だけの世界で、慣れた人たちとばかりと仕事をしていると表現が丸くなって緊張感がなくなってくるんです。自分で気をつけることも大事ですが、物理的に表現の場を変えることも重要。どんなチームで、どうやったらできるのか、試行錯誤しながら、やっていくことで緊張感を持てるし、新しい風が吹くんです。もちろん初めてのチャレンジの場は大変で、予想外な出来事ばかり。でも、その分現場には楽しさやワクワクがあって、できた時の達成感がある。そういうのは見ている人にも伝わるんですよね。それがやめられなくて、新しい場所に行ってしまいます(笑)。

周りのスタッフさんは大変そうですね…(笑)。蜷川さん自身、写真を撮る際の気持ちや姿勢に変化はありますか?

写真に対する新鮮な気持ちだったり、シャッターを押すことへの純度だったりを、汚さないよう常に気をつけています。『蜷川実花っぽい写真』を撮るのはけっこう簡単なんですよ。あのレンズとフィルムでこういう被写体を撮れば……という具合に計算すれば撮れてしまう。でもそれって、コーティングは立派なのに中身はスカスカなお菓子みたいなものなんですよね。そういう芯がない写真を撮っても意味がないので、『写真に残したい』と心が動いたときだけシャッターを押すという、そこは絶対に守るようにしています。

しかし、そういった気持ちを持ち続けることは決して簡単なことではないように思います…

私の作品を見てくださる方は、「かわいい」「きれい」といった感想を持ってくださることが多く、本当のメッセージが伝わりづらいこともあります。でも、それは言葉にできていないだけで、本当はその奥にある何かを感じてくれていて、好きでいてくれているんだと思うんです。いつも見る人の「かわいさ」や「きれいさ」に添っていくのではなく、本当に自分が心動いた瞬間を大切にしていますね。かと言って、自分のエゴだけではなく、仕事であればクライアントさんのオーダーに対して受け入れつつも変化球で返したり、同じことはしないよう意識しています。

では、作品を生み出す際に最も大切にしていることは何ですか?

誠実に丁寧に仕事をする。それに尽きますね。私、こう見えて真面目なんですよ(笑)。写真集一冊作るのにもものすごく時間をかけます。時間をかけているからすごい、というわけではないけれど、誠実に丁寧に仕事をすることが何より大切だと思っていますし、そうやって仕事をしてきたからこそ、20年間、続けてこられたのではないでしょうか。

継続し、発信し続けることはとても大変なことだと思います。蜷川さん自身が思う、他者には負けないところ、自分の強みはどんなところだと思いますか?

周囲への頼り方、しつこさ、でしょうか。サポートしてくださる人たちはたくさんいますが、自分の判断軸を他に委ねないようにしています。一人でコツコツやり続け、自分を信じきれるぐらいの努力をずっと重ねてきました。よく『女性であるがゆえに苦労した経験はありますか?』と聞かれるんです。けれど、まったく思いつかないんですよね。なぜだろう?と、自分でも不思議に思っていたんですが、最近ようやくわかったんです。『蜷川幸雄の娘』『二世』という理由でいやな思いをする場面が本当に多くて、私はそれとずっと戦ってきました。そのせいで、『女性であるがゆえに大変だ』というところまでたどり着けなかったみたいです(笑)。

なるほど…そんな作り手の人柄を知ると作品の見方も変わりそうです。蜷川さんが写真や活動を通して最も伝えたいことは何ですか?

伝えたいことを説明するのは野暮かなと思っていて、あまり言葉にしないようにしてきたんです。人の欲望だとか、人工的につくられたものの意味だとか、作品それぞれに違ったテーマがあるので一概には言えませんし。ただ、私は、思考が停止する恐ろしさ、みたいなことがいつも気になっていて、それはすべての作品に共通しているかもしれません(笑)。

「ヘルタースケルター」DVD&Blu-ray発売中 発売元:ハピネット 販売元:ハピネット (C)2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会 (C)岡崎京子/祥伝社

今回の展覧会は、観る人自身の錆ついてしまった思考が動き出すような、そんな刺激を得られる場になるはずです。
ところで、静岡にはどんな印象をお持ちですか?

私、お茶が大好きすぎて毎日必ず飲んでいます。まずいお茶が出てくると機嫌が悪くなるぐらい好き(笑)。日頃から静岡のお茶にはお世話になってるので、この機会に現地で緑茶を飲みたいです。 静岡は東京からも距離が近いですし、思い返してみると私自身よく足を運んでいました。桜を撮りに行ったり、伊豆や富士山の近くで撮影をしたり…意識をしていなかったけど、すごく縁があったんです。静岡の街には行ったことはなかったので、このような機会をいただき楽しみです。

20年の集大成が見られるということで静岡の皆さんも期待しています。最後にメッセージをお願いします。

今回の個展は、私のこれまでやってきた仕事の全貌が見えるものになっていると思います。私のことを『AKBのPVを撮っている人』『ヘルタースケルターを撮っていた人』といった一部分で認識されている方も多いのではないでしょうか。でも実際には、色彩豊かな作品もあれば、色のない作品もあり、挑戦的な表現をしているものもあります。それらを一度に全部見てもらえる機会はなかなかないので、静岡の皆さんにはぜひ足を運んでもらいたいです。

ポスター

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